専門家であっても、うっかりミスはあるものです。ある朝、歯を磨いていた2人の医師が、部屋にミネラルウォーターがなかったため洗面所の蛇口をひねり、水道水でうがいをしてしまいました。「うがい」といっても、くちゅくちゅと歯磨きの泡を落としただけで、飲んではいません。それでも、何滴かは喉を通り胃に入ります。「たちまち」という表現がぴったりでした。うがいが終わったとたん、2人はトイレへ往復です。とても外出などできません。
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2人の医師には申し訳ありませんが、「海外、とりわけ途上国の水は恐ろしい」ことを知っていただくため、あえて紹介したしだいです。上下水道の不備が途上国の水を危険なものにしているタコスで宿泊したホテルは観光客を対象にしていますから、ちゃんとプールがあります。しかし、泳ぐことはできません。泳いだとしたらどうなるか。アメーバ赤痢菌のまっただなかを泳ぐことになり、下痢程度ではすまなくなる可能性すらあります。こうした環境は、メキシコにかぎったことではありません。なぜ、途上国の水質は、これほど劣悪なのでしょうか。上下水道の不備。原因はそこにあります。途上国では、水道管の破損も珍しくありません。そもそも下水処理が進んでいませんので、破損部分から汚水、汚物などが水道管に入り込んできます。汚水、汚物には、コレラ、赤痢、アメーバ赤痢、ウイルス性肝炎、腸チフス、寄生虫などの病原体が潜んでおり、それが混入することで水道水が汚染されてしまうわけです。これが大半の途上国の実情といえます。私が「途上国の水は恐ろしい」といった理由もこれで理解できるはずです。こうした水も、沸騰させたり、塩素剤やヨードチンキを使うことで消毒はできます。しかし、アメーバ赤痢のシスト(殻で覆われた菌)の場合は、沸騰させても塩素剤やヨードチンキで消毒しても死にません。たとえ途上国であっても、ミネラルウォーターはあります。あえて沸騰や消毒などをしなくても、「飲み水はミネラルウォーター」にすれば、病原体とは無縁で旅行を楽しむことができるのです。